【エッセイ】前への歩き方。[その1歩]

この週末は新型コロナウィルス感染症の影響で各種行事やイベントが中止・延期になり様々な活動が停滞してしまいました。また、明日から全国の幼稚園、小中学校が臨時休校に入り、家庭のリズムが混乱しています。新型コロナウィルスが収束し、いつもの生活、当たり前の日常が一日でも早く戻るよう、みんなでこの困難を乗り越えていきましょう。

イベント自粛のこの機会を利用して、議員活動とはすこし離れた黒崎祐一の考え方や思いをお伝えするエッセイを「前への歩き方。」と題して書いてみました。お時間のあるときに、読んでいただければと思います。エッセイのタイトルを「前への歩き方。」としたのは、以前、ラグビーマガジン(2018年6月号)巻末インタビューに登場させていただいた際、田村一博編集長がつけていただいた「前への歩き方。」という見出しがとても気に入っていたから、です。どうぞよろしくお願いします。

まだまだ寒い日が続きますが、この冬場は、私には心躍る季節です。そう、私が長年プレーしてきたラグビーの季節なのです。昨秋のワールドカップ日本大会(RWC)の影響で、いつもは8月から1月に開催されていたトップリーグ(TL)が1月開幕で行われています。その一方で、連日感染者が増えている新型コロナウィルス感染症の影響で、2月26日には第7節(2月29日&3月1日)、第8節(3月7&8日)の開催延期が発表されました。残念ですが、感染拡大を考えればやむを得ない判断でしょう。コンデショニングを第一に考えれば選手ファーストで無観客試合という選択肢もあったようですが、政府の呼びかけもあり、延期という苦渋の選択は、妥当だと考えます。動向次第で更なる対応や判断が必要になってくると思いますので、まずは自分でできる感染予防を心がけ、今後の情報や動向に注視したいと思います。

さて、私の現役時代の話を少々。私がプレーしていたのは左プロップ。スクラムを組むときに最前線左側のポジションです。今で言うと「笑わない男」と同じポジション(笑)。ラグビーはプロ野球のように好きな背番号を背負うのではなく、ポジションによって番号が決まっているのです。なので、私のポジションである背番号「1」にちなんで、毎月1のつく日に、この「前への歩き方。」も発信していければと思っています。

ラグビーを愛する人たちにとって2019年は、特別な1年になりました。9月20日から11月2日までの44日間。全国各地でRWCが開催され、日本代表がベスト8進出という歴史的な偉業を遂げてくれました。高校日本代表に選ばれ、一度はRWCという舞台を目指した私にとっても誇らしい活躍でしたし、いままでラグビーに関心がなかった方々までも日本代表の選手たちは虜にした。こんなにラグビーが日本中の皆さんに注目され、応援されたことは、いままでになかった快挙なのです。

RWCは、オリンピック・パラリンピック、サッカーワールドカップに次ぐ、世界3大スポーツイベントの1つなのです。私が現役時代には、RWCを日本で開催するなんて想像もできなかった。なので、いまはラグビージャージーをスーツに着替えた私ですが、何かラグビーのために、選手とファンのために力になりたいと考えるのは当然のことでした。

自分ができることは何か。試行錯誤の中で辿り着いたのは、スタジアムに行けない多くの方々にもRWCを体感し、楽しんでもらいたいという思いでした。最終的には、私が議員を務める港区の3箇所(港南・お台場・芝公園)で合計4回のパブリックビューイング(PV)を開催して、スタジアムの外でもRWCの雰囲気や世界レベルの超一流プレーを見て楽しんでいただけたと思います。ただ、そこまでの道のりは、山あり谷ありでした。

港区には〝ラグビーの聖地〟と呼ばれる秩父宮ラグビー場があります。すでに70年近い歴史を誇る殿堂です。せっかく秩父宮ラグビー場があるのですから、港区とラグビー界がお互いに何か協力できないかという思いで、2009年から港区と日本ラグビーフットボール協会が連携協定を締結しRWC開催へ向けてお互い頑張っていこうという基盤ができたのです。しかし、残念なことに秩父宮ラグビー場と新国立競技場がRWCの会場として使えないことが決まり、港区がRWCとどう関わっていくかを考え直すことになりました。

最初はラグビーファンやファン以外の皆さんが集まり、楽しめる空間やイベントをやろうと考え、予算をつけてもらうことができました。でも有楽町と調布にRWC大会オフィシャルのファンゾーンができることが確定して、自治体としてできることは何かと、もう一度考える必要がでてきた。そこで浮上したのが、試合会場に行けない人たちにPVで試合を放映して、ラグビーの祭典を楽しんでもらう場をつくることでした。港区には六本木や品川など各地に大型ビジョンがある。港区に来ればRWC各会場の試合が全部見られるような場所をつくろうということで動き始めたのです。

熱心なラグビーファンは、入手困難なチケットを手に入れて試合会場に殺到する。でも、実は大半の日本人は世界最高峰のプレーをスタジアムで見ることはできない。そこで思い至ったのが、スタジアムで見られないのなら、スタジアムの外で見られるようにしよう、という発想でした。世界最高峰のプレーを、そしてあの勝ち負けを超越した感動を、スタジアムで観戦したファンだけしか味わえないなんて、あまりにももったいない。だから、スタジアムに行けなくても、スタジアムで感じられる臨場感、一体感をたくさんの人に共有していただきたい。ラグビー単独だと難しいが、翌年(2020年)にはオリンピック・パラリンピックがある。オリパラに向けて可能性がどこまであるかという実証実験的な要素も含めて、やってみようという方向性が固まったのです。

でも、RWC開幕前は、まだ港区関係者や区議会の中には日本代表や大会自体に期待感を持てない人もいたのです。さまざまな話し合いの場で、私が「PVをすれば、最低でも2000人は必ず来ます」と話しても、あまり実感してもらえなかった。「そもそもRWC盛り上がってないよね」という声もあったのです。でも、始まってみると、日本代表の活躍もありPV会場はどこも毎回大賑わいでした。

いちばん難しかったのは「場所の確保」です。室内であれば映画館、場合によっては学校の体育館でもよかった。でも私個人は、どうしても屋外でやりたかったのです。屋内では、多くのラグビーファンが大好きなビール片手の観戦も制約があるし、会場の外の人たちに発信もできない。屋外でできる公共のスペースや民間の広い土地を探すところから始まり、ビジョンカーが入れるのか、試合中継を受信できるか。しかも行政が行うイベントとなれば安全第一ですから、混乱を避けるために警備を整え、入場整理券を用意する必要がでてきたりと、ハードルがどんどん高くなっていったのです。

でも、苦労した甲斐がありました。品川インターシティで開催した9月28日の「日本vsアイルランド」戦のPVには、2500人の方々に来ていただけたのです。すごい盛り上がりでした。その後も10月5日の「日本vsサモア」戦に合計1600人のファンや区民の皆さんが集まって、日本代表を一体となって応援し、楽しんでいただきました。

日本代表の決勝トーナメント進出という快挙で、急遽、10月20日の「日本vs南アフリカ」戦の準々決勝を追加開催。改めて場所の確保とビジョンカーの手配、行政や組織委員会との交渉等もろもろ調整して、開催にこぎ着けることができました。そして、フィナーレである11月2日に芝公園で行われたRWC決勝戦「イングランドVS南アフリカ」戦のPVには約4000人の方が集まり、大盛況の中で大会を終えることができたのです。

PVを開催してみて再認識できたのは、放映用の大きなビジョン(スクリーン)と人が集まる場所があれば、いろいろなことができる可能性があるということでした。

みんなが集まれる場所を作り、イベントをすれば、行政としては、どうしても安全性を重視していくものです。でも、本当に大切なのは、たくさんの人たちが一体感を持てることだと学びました。そのためには、食べ物や飲み物がふんだんにあることや、ラグビーとは関係ない人も参加して、誰もが楽しめる環境を用意することがすごく重要なんだと実感したのです。キッチンカーを呼んできたり、チアリーディングのチームに演技をしてもらったり、ラグビーを体験できるスペースや一流選手と交流する機会を創出して、普段はラグビーと繋がりがない人たちも集まって、会場にそのまま残って一緒になって笑ったり、試合に声援を送ったりしていただける仕掛けを作ることに取り組んだのです。
これこそが、私が感じたRWCの「レガシー」(遺産)でした。

ラグビーワールドカップの大成功、そしてパブリックビューイングが生み出すものを実感したいま、私の胸の中には「これで終わりじゃない」という強い思いがあります。この熱気や雰囲気を〝これから〟に繋げていきたいのです。次の「前への歩き方。」ではこの〝これから〟にも触れたいと思います。

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