【質問内容】
◯7番(黒崎ゆういち君) 平成27年第4回港区議会定例会におきまして、自民党議員団の一人として、武井区長並びに小池教育長に質問をさせていただきます。
まず、質問に先立ち、少しお時間を頂戴したいと存じます。私は、学生時代にラグビー日本一という夢を一心不乱に追いかけ、また、卒業後は総合商社で鉄鋼事業に携わり、日本経済が世界の中で大きく翻弄されていく姿を目の当たりにしてきました。一方で、その間も母校のコーチとして後輩を育成する機会に恵まれ、指導者として貴重な経験を積んでまいりました。
これからの日本の社会には何が必要なのか。これまでの経験をもとに懸命に考えた結果、たどり着いたのは、「One for all, All for one(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」というラグビーを象徴する言葉に根差した人づくりでした。親だけでなく地域のみんなで子どもたちの夢を探し出し、応援する。くじけそうな若者がいたら、周囲の支えによって立ち直らせる。病気やけがに苦しむ大人を地域の力で介抱する。そんな社会だったら、人々はどんなに心豊かに暮らせることでしょう。人は一人では生きていけません。周りの人々との相互支援によって、それぞれの人生が実りあるものに変わる世の中を実現したい、私はそう考えています。
まず、実現したのは、次代を担える健全な子どもの育成を支援するNPO法人みなとラグビースクールの設立です。グラウンドや合宿で一緒にスポーツをすることで、体力と精神力を鍛えるだけでなく、子どもたちは集団行動の中で仲間との関係性を理解し始めています。そして、2019年のラグビーワールドカップ日本大会や2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、秩父宮ラグビー場を擁する港区が、開催地として最大のメリットを享受し、そのレガシーを次代につないでいくために、一般社団法人港区ラグビーフットボール協会を設立しました。
子どもたちにスポーツや学びの場を与える一方、彼らを指導する大人たちもまた多くの経験や示唆を得て、より豊かな人生を目指す。これはラグビーに限らず、社会全体に共通する相乗効果だと言えます。まずは、さまざまな場を提供することが大切です。そして、この仕組みを次世代に継承されるシステムにすることが重要です。
私、黒崎ゆういちは、次世代の育成環境と継承システムづくりを実現するための第一歩として、今この場に立っております。そして、この経験を生かし、港区が抱えるさまざまな課題をひとつひとつ丁寧に解決するべく、民間企業での経験も加え、区民の皆さんと視点を同じくし、港区を前へ進めるために頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、質問に入らせていただきます。
初めに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるレガシー創出に関して3点お伺いいたします。
まず、港区では、オリンピックにおいて、お台場海浜公園でトライアスロンと水泳10キロマラソンが、パラリンピックでは同じくお台場海浜公園にてトライアスロンが開催されることが既に決定しております。また、大会開催の準備にあたり、港区議会においても東京オリンピック・パラリンピック対策特別委員会が設置され、企画経営部が全庁横断的な窓口となり、運営主体である東京都オリンピック・パラリンピック準備局と連携して準備が進められています。
先ほども触れましたが、現在、東京都との折衝や対応全般の窓口については企画経営部が、文化プログラムについては産業・地域振興支援部が、スポーツ施設等による各種イベントやプログラムについては教育委員会が、それぞれ所管として対応しています。今後、区として、成功に向けた積極的な施策の企画立案を推進し実行していくためにも、それぞれの所管に、東京都オリンピック・パラリンピック準備局から来た案件をつなぐ窓口機能だけではなく、専管組織の設置による準備を推進すべきではないでしょうか。競技をホストする重要な役割を担う港区として、積極的な施策の企画立案を推進し実行していくためには、まず、区が特化する体制をとることで庁内に円滑なコミュニケーションと理解が生まれ、成功につなげることができると思われますが、区長のお考えをお聞きいたします。
また、大会の成功や大会の遺産であるレガシーの創出に向けて、区が何を目指し、区民が一丸となってどう行動していくかを、わかりやすい言葉で表現することも重要ではないでしょうか。もろもろのプランを派生的に推進していくためにも区独自のスローガンが必要だと思いますので、あわせてお聞きいたします。
次に、2019年のラグビーワールドカップ日本大会、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会と2年連続で世界3大スポーツ大会のうちの2大会が東京で開催されるにあたり、区としてスポーツツーリズムを推進していくことが、港区が持つ特性を最大限に生かし、「日本に港区あり」を世界に発信できる施策であると確信しております。
港区は、神宮球場での野球、秩父宮ラグビー場でのラグビーなど、国際的に高い評価を受け既に日本独自の文化となった「観るスポーツ」の拠点を有しております。また、日本有数の大型滞在施設や各国大使館、海辺、運河などの自然環境を身近に感じながら、国際的スポーツに親しめる「するスポーツ」の立地環境があります。さらに、これからではありますが、選手を応援する区民ボランティア、大会を運営する地域や企業を巻き込んだ「支えるスポーツ」の組織づくりも始まっております。
スポーツツーリズムとは、日本が誇るすぐれたスポーツ資源・環境とツーリズムの融合であります。スポーツにかかわる旅行そのもの、あるいは周辺地観光を加えたプログラムだけではなく、スポーツを「観る・する・支える」人々との交流、旅先で気軽にスポーツを楽しめる環境の提供など、これまでの旅行スタイルを変革することや健康と環境を重視し、スポーツの普及とスポーツを通じた地域活性化を目指すものであります。
具体的な例を申し上げますと、スポーツが目的でなかった旅行者が不意にスポーツをしたいと思ったときに、スポーツ施設の情報とともに、ランニングマップと運動靴、サイクリングロードマップと自転車などの提供や貸出が受けられるサービスの普及であります。また、観光案内所はもちろん、ホテルのコンシェルジュやフロント、客室に置かれているパンフレットなどで、宿泊者に利用可能なスポーツ施設やイベント、体験ツアー等の情報を提供することであります。既に発行している「とっておきの港区」にすぐにタイアップできる内容ですが、戦略的に推進していくには観光という観点だけではなく、選手団の受け入れが可能な大型滞在施設の誘致や標識の多言語化、自転車シェアリングポートの充実、バリアフリーやユニバーサルデザインのさらなる推進、危機管理対応等、多元的な環境整備も必要です。
また、スポーツツーリズムを推進していくには、さまざまなスポーツ関係者との連携や協働が不可欠です。港区固有の資源を活用したスポーツコンテンツをつくり、その魅力を効果的に発信するなど、集客や経済効果が見込める国際競技大会やスポーツイベントの開催に向けた、区を挙げての取り組みが必要です。そして、国内外から旅行者を誘致し、集客を行うための旅行商品化と情報発信の推進が重要です。スポーツツーリズムのコンテンツづくりやスポーツ大会の開催と旅行商品化と情報発信の推進の両輪が機能して、初めて取り組みが持続可能となり、具体的な効果が生み出されると言われております。
このようにスポーツツーリズムの考え方は、大きな枠組みにまで広がるものであり、多様な効用が得られるものであります。しかしながら、この取り組みはまだ始まったばかりであり、国、地方自治体において試行錯誤している段階にあると思います。第2次港区観光振興ビジョンにおいても、MICE誘致の取り組みの中に国際競技大会の例示がありますが、残念ながら、それにとどまっております。来年度以降、次の港区観光振興ビジョン策定に向けた準備が始まるとのことですので、その中で議論していただくことを要望します。まずは初めの一歩として、スポーツ観戦や大会への参加など、スポーツを目的に区を訪れた方々には港区観光を楽しんでいただき、また、観光やビジネス目的で訪れた方々にはスポーツに関する情報を提供するといった双方向の取り組みを意識した観光施策を展開していただきたいと考えますが、区長のお考えをお聞かせください。
そして、去る11月11日に2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会におけるアメリカチームのキャンプ地が世田谷区に決定したとの報道がありました。事前キャンプや大会期間中の練習の拠点として、世田谷区立大蔵運動場などが使用される予定で、11月13日には世田谷区及びJOC、すなわち日本オリンピック委員会並びにアメリカオリンピック委員会との間で覚書が交わされたとのことです。これまでに福岡県福岡市がスウェーデンのキャンプ地に、千葉県山武市がスリランカのキャンプ地に決まるなどしていますが、東京都内では初めてのケースとなります。港区においても事前キャンプ誘致を実現するのであれば、区内に多数存在する在日大使館や各国外資系企業等にピンポイントでアプローチし、積極的に誘致活動を展開すべきだと思いますが、教育長のお考えをお聞かせください。
次に、今後のまちづくりにおける区民意見の反映に関してお伺いいたします。
私が主に活動している港南地域では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、羽田空港機能強化に伴う飛行ルート変更や山手線の新駅開業、また、2027年のリニア中央新幹線の開業に合わせて、環状第4号線延伸計画や品川駅にターミナル駅を新設するなど、さまざまな再開発やまちづくりが計画されております。同地域におけるさまざまな計画は、区内において最大規模と言っても過言ではない内容のものが多数存在しております。事業主は国や東京都、JR東日本やJR東海等の民間事業者とさまざまですが、港区基本計画における多様な人びとがいきいきと暮らせる都市ルールを確立するの政策の中で、「それぞれの地域特性に応じて、住民、事業者、行政等がまちの将来像を共有し、誰もが安全で安心して住み続けられるまちづくりに連携して取り組むことが必要」と記載されているとおり、地域の思いと声が反映されるプランを推進するべく、最大限の対応をお願いいたします。
港南地域にお住まいの方々からは、「計画の全容が見えない」、「個別の対応で住民の声がうやむやにされる」、「決定ありきの計画で取り合ってもらえない」等の声が寄せられております。区が主体にならない計画においても、「それぞれの地域特性に応じて、住民、事業者、行政等がまちの将来像を共有し、誰もが安全で安心して住み続けられるまちづくりに連携して取り組む」という港区基本計画の考え方を反映していただきたいと思います。地域の課題を地域で解決している港南地域において、区の政策実現を進めるだけでなく、今起きている諸問題に対して、総合支所が港南地域にお住まいの方々の思いと声を事業者にしっかりと伝え、丁寧に対応すべきだと思いますが、区長のお考えをお聞かせください。
最後に、平成27年2月に教育委員会が策定した港区スポーツ推進計画に関してお伺いいたします。
本計画は平成27年度から、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される平成32年度までの6カ年計画となります。まだ初年度も終了しておりませんが、大変夢のある充実した計画となっておりますので、その実現の見通しについて、2点お聞きいたします。
まず、同計画には、区のスポーツに関する現状と課題が4項目、主要課題が9点にわたって掲出されていますが、その課題を克服するための誰もが気軽に楽しめるスポーツ活動の促進、スポーツを通じた仲間づくり・地域づくり、港区ならではのスポーツ文化の醸成、スポーツを楽しめる場の確保、スポーツ活動を支援する環境の整備、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての6つの基本目標に基づく7つの重点事業並びに10の新規事業について、現在の進捗状況を教育長にお伺いいたします。
なお、私が特に関心がある基本目標のスポーツを楽しめる場の確保、重点事業の区立のスポーツ施設等の環境整備につきましては、より具体的な回答をいただければ幸甚です。
そして、同計画の目指すべき姿として掲げる「みんなではぐくむスポーツ文化都市みなと~誰もが生涯を通じてスポーツを楽しみスポーツで元気になるまちを目指して~」のキャッチフレーズを実現していくためには、区民や区長部局だけでなく、地域で活動しているスポーツ関係機関や団体との連携・協働が必須となります。
そこで、現在の推進体制や連携・協働の状況につきまして、どのように取り組んでいるのか、教育長にお伺いいたします。
以上で質問を終わります。初めての質問にあたり、さまざまなご指導を賜りました皆様に、この場をかりて御礼申し上げます。ご清聴まことにありがとうございました。
【区長答弁内容】
◯区長(武井雅昭君) ただいまの自民党議員団の黒崎ゆういち議員のご質問に順次お答えいたします。
最初に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会についてのお尋ねです。
まず、専管組織の設置とスローガンの策定についてです。港区基本計画では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えたまちづくりの推進を重点課題の一つとして位置づけました。安全で安心できるまちづくりをはじめ、国際化やバリアフリー化の一層の推進、環境美化の取り組み、観光振興とあわせた区内の産業振興、商店街振興など、区のさまざまな施策の推進を加速化させるとともに、競技が行われる自治体としての必要な支援を行うため、企画経営部が庁内調整等の役割を担い、全庁横断的に取り組んでおります。専管組織の設置につきましては、今後の大会開催へ向けたさまざまな動向などを踏まえ、検討してまいります。
また、区独自のスローガンにつきましては、今後の大会開催に向けた気運醸成の取り組みにあわせ検討してまいります。
次に、スポーツツーリズムについてのお尋ねです。
港区は、多彩なスポーツイベントが行われ、ラグビーや野球など世界トップクラスのアスリートによる競技を身近に観戦できる環境にあり、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、トライアスロンなどの競技会場となります。スポーツを目的として訪れる方々への観光情報の提供、観光、ビジネスを目的として訪れる方々へのジョギングコースなどのスポーツ資源の紹介やスポーツイベント情報の提供など、スポーツの力を今後の観光施策に積極的に取り入れてまいります。
最後に、まちづくりにおける区民意見の反映についてのお尋ねです。
区は、東京都が品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014を策定する際に、東京都と連携し地域の方々に情報提供するとともに、地域の意見を踏まえた検討を東京都に要請するなど、区民の意見が反映されるまちづくりの実現を目指してきました。
芝浦港南地区総合支所は、毎月、地域の町会や自治会などで構成されている港南地域連合会において、区からの情報提供や意見交換を行うとともに、JR東日本やJR東海、東京都などの事業者による地域への説明に際して、港南地域連合会で情報提供や意見交換を行うなどの調整をしております。今後も、港南地域連合会や商店会などの協力を得ながら、地域の皆さんのご意見を事業者に伝え、対応を求めることで、住民、事業者、行政が連携し、安全で安心して住み続けられるまちづくりを進めてまいります。
よろしくご理解のほどお願いいたします。
【教育長答弁内容】
◯教育長(小池眞喜夫君) ただいまの自民党議員団の黒崎ゆういち議員のご質問に順次お答えいたします。
最初に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の事前キャンプ誘致についてのお尋ねです。
事前キャンプを誘致することは、世界のトップアスリートの活躍を身近で感じることができ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会への気運が醸成されるなど、区のスポーツ振興に大きな効果が期待できます。そのため、区は、本年9月に公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会へ事前キャンプ誘致の意思表明を行いました。区はこれまでも、大使館と連携し、各国の文化や伝統についての理解を深める国際交流事業や外資系企業と連携した環境事業などの取り組みを進めております。今後とも、このようなつながりを最大限に活用し、積極的に事前キャンプの誘致に取り組んでまいります。
次に、港区スポーツ推進計画についてのお尋ねです。
まず、基本目標の達成に向けた事業の進捗状況についてです。港区スポーツ推進計画では、7つの重点事業及び10の新規事業を掲げており、スポーツボランティア育成事業、オリンピアン等によるスポーツ教室及び国際大会のパブリック・ビューイング事業など、区民が生涯を通じてスポーツに親しむことができるよう積極的に取り組んでおります。
区立のスポーツ施設等の環境整備については、来年1月から2月にかけて、埠頭少年野球場の人工芝の張り替えを行う予定です。今後も計画的にスポーツ施設などの環境整備の充実に努めてまいります。
また、より利用しやすい施設づくりに向けて、個人参加型プログラムのヨガ教室や健康づくり運動教室など、約30のプログラムを実施しております。今後も港区スポーツ推進計画に基づき、さまざまな取り組みを積極的に推進してまいります。
最後に、推進体制及び連携・協働の状況についてのお尋ねです。
区ではこれまでも、スポーツ推進委員をはじめ地域のさまざまな方々と連携し、総合型地域スポーツ・文化クラブを立ち上げることや公益財団法人日本ラグビーフットボール協会や一般財団法人港区体育協会などと連携したさまざまな事業を展開してきました。今年度は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた気運醸成のために実行委員会を組織し、トップアスリートによるスポーツ教室について、地域の方々やスポーツ関係団体とともに企画内容の検討を行っております。今後も、「みんなではぐくむスポーツ文化都市みなと」の実現に向けて、地域の多様なニーズに応えるため、区民をはじめ、地域のさまざまなスポーツ関係機関や団体等と連携・協働した取り組みをさらに進めてまいります。
よろしくご理解のほどお願いいたします。
▼上記質問の動画は「港区議会インターネット録画配信システム」で下記URLでご覧いただけます↓
http://www.minato-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=speaker_result&speaker_id=133
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